[車中のニンフェット]

「このクソ野郎!」

 ヒステリックな声で、女とは思えないような暴言。頬に感じた衝撃。恋人だった(過去形でいいよ、もう)女はハンドバッグを引っつかみ、ハイヒールを鳴らしながら去っていった。

 好奇の目を向けてくる周囲に(見るんじゃねえ)と、心の中で毒づく。席を立ってさっさとレジにいくと会計を済ませ、喫茶店を出た。……ああ、なんで俺があんな女のコーヒー代まで払ってやらなきゃいけないんだ。今まであの女のために、いったいいくら消費してきたんだろう。金も時間も。

 たった一回ブサイクな女と寝ただけで、こんな破綻を呼んでしまうなんて。地味な顔に地味な服装のその女は「ずっと……好きでした」と、上目遣いに言ってきた。どういうわけかほだされてしまった。射精したら現実に戻り、冷めた。

 そうしたら、ブサイクな女は噂を流した。

 ……何だ、全部俺が悪いのか? ああ、女って怖い、恐ろしい! でも女断ちはできそうにない。この通り、要領が悪いのに……俺は破滅型なんだろうか。痛む頬をさすりつつ駅へ向かい、帰るために電車に乗った。

 ホームにいたいちゃいちゃしていたカップルを見て、いまさら自分の愚行に後悔を覚えながら席に腰かける。(情けねぇなあ)……目の前の席に異様な雰囲気の少女が座っていた。

 年は十一、二くらいだろうか。ピアノの発表会でもあったのか水色のふわふわしたワンピースを着て白いタイツを穿き、爪先の丸い、黒いエナメルのかわいらしい靴を履いていた。ただ、羽織っているナイロンのジャンパーだけスポーティーでそぐわない。異様なのは別にそこじゃない。少女の隣にいる母親だろうと思われるおばさんが、ワンピース一枚だと寒いから着せてあげたんだろう。

 問題は表情。少女は切れ長の目で床を睨み、薄い唇は固く結んでいた。物凄く不機嫌そうな顔。少女はきっとクラスで一、二を争うと予想できるくらい美しい面立ちをしている。幼さに、表情のせいで混ざる冷たい美。

 細くて柔らかそうな髪がかかっている、少女の白い喉元をつい凝視してしまった。君、それは大人の色気だ。

 ……何だっけ。大学の課題でなんとかコフの「ロリータ」っていう、小説の読書感想文を書かされたな。読む前はてっきり幼い少女がアレコレされる話だと思って怖かったけど、実際は主人公のオッサンがロリータに哀しく弄ばれる話だった。小さな娼婦、と表現していたっけ。オッサンはそんな少女をニン……フェットと称し、渇望していた。

 少女が床から視線を離し、ゆっくりと俺を見た。氷のような目をしている。

(何だ、君まで俺を侮蔑するのか)


「この、クソ野郎」

 子供らしい、甘ったるい声だった。

 少女が俺に近寄ってくる。ジーパンの股間に、お人形さんが履くような靴が載せられた。

「クソ野郎、クソ野郎、クソ野郎」

 少女は無表情で俺を見下しながら、足に体重をかけていく。じわじわと圧迫されていく俺のチンコ。

 少女を蹴り倒した。転げた華奢な体に伸しかかると、ワンピースを捲り下着ごとタイツをずり下ろす。そして俺も下半身の衣類を下ろすと、勃起したチンコを少女のすべすべしたマンコにねじ込んだ。狭い。

 清潔な粘膜はチンコを浄化してくれるような気がする。少女は犯されても、その冷えた顔を崩さなかった。マンコだけじゃ飽き足らず、尻の穴に突っ込んでみても、少女はただジッと俺を睨んでいるだけだった。


 チンコを擦る手を止めて、ため息を吐き、乾いたティッシュを丸めて捨てる。無理。

(何やってるんだろう、俺は)

 電車を下りるときおばさんが少女に向かって「あやかちゃん、また次があるわよ」と、言ったのを聞いた。何だ、あの恐ろしいほど不機嫌そうな表情はそんな可愛い理由か。

 後日、俺はブサイクな女と付き合うことにした。我ながら病気だと思う。



 END.



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