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[愛の正確性]

 仕事から疲れて帰ってくるといつも通り、妻のユミコが豊満な胸を左右に揺らしながら小走りで迎えてくれた。ユミコは縁がフリルで装飾された、白いエプロンを裸の上に着けている。

 それは僕が頼んだことだ。夫に従順ないい妻である。

「あなた! おかえりなさい」

 不快にならない程度に響く高音の声。ユミコは僕の目の前で立ち止まり、満面に笑顔を浮かべてみせた。本当、可愛い女だ。

 もっちりとした色白の肌にやや目じりの下がった瞳と、腫れぼったい唇を有した童顔。男好きのしそうな、ほどよくぽっちゃりとしたグラマラスな体形。緩くウェーブのかかった栗色の髪。僕のペニスはもう頭をもたげはじめている。

「ご飯にする? お風呂にする? それとも……」

 いつものセリフ。そそられるよ、

「右フック?」

 被虐心が。ユミコの拳がみぞおちに入った瞬間、僕は膝から崩れた。背中を丸めて咳き込みながらも、ペニスはズボンの中で窮屈さを感じるくらいに勃起する。

「やだ、あなたったら。貧弱なんだから」
「ご、ごめんよ」

 口に手を当てて息を詰まらせながら仰ぎ見ると、僕を見下している可愛い顔と、エプロンのフリルから僅かに覗かせているペニスバンドの先端が見えた。背筋に、恐怖に似た期待感が走る。

「ほら、夕飯出来てるんだから早く来て」
「あ、ああ」

 頷いて、ふらつきつつ立ち上がると革靴を脱ぎ、先に行くユミコについてリビングへと向かった。

 テーブルの上には刺身が載った皿とグラスが置いてある。何故か箸と醤油皿はなかった。ネクタイを緩めて椅子に座ると、ユミコがビール瓶を何本か持ってやってくる。

「あなた、今日も一日お疲れさま」

 ドン、と、ビール瓶たちをグラスの傍に置いて、そのうちの一瓶の王冠をユミコが栓抜きで外した。僕を労りながらグラスに錠剤を一粒二粒落とすと、ユミコは泡の割合など考えていないのかビールをなみなみと注ぐ。

 多分これは利尿剤だ。さすがユミコ。飲めばトイレの近くなるビールを沢山スタンバイさせておいて、さらに利尿剤。

「ありがとう。いただきます」

 すべて飲まなければ、きっと許してはくれないだろう。ユミコがにこにこしながら僕を見ている。グラスに口をつけた。

 酒は弱い方じゃない。ビールなんて何杯飲んでも、泥酔までしてしまう不安はなかった。グラスをからにすると、すぐにまたビールが注がれる。それを繰り返し、ほろ酔いになってきたところで膀胱が限界を告げた。

「げふっ……あの、ユミコ。もうそろそろ止めにしないか?」

 膀胱だけじゃない。腹だって膨れてもう限界だ。

「あら。あたしの注いだビールが飲めないの?」

 ユミコは唇をへの字に曲げて、わざとらしくむくれてみせた。かわいらしくも何だか悪魔じみている。

「いやそういうわけじゃなく、てっ」

 途端、ユミコに下腹を強く押されて僕は小さく悲鳴を上げた。ほとばしりそうになった尿を慌ててせき止める。

「ご、ごめん。飲む、全部飲むから!」

 ユミコはふっと表情をやわらげると、地獄のお酌を再開させた。僕は何も考えずにビールを流し込み続ける。ようやくビール瓶たちを全部からにした頃には、土下座してでもトイレへ行きたくなった。

 しかしユミコが普通にトイレへ行かせてくれるわけがない。ユミコは「そういえば、お刺身のお醤油切らしちゃってるの。ごめんね」と不自然なことを言って、刺身の皿を指した。

 この可愛い悪魔め! ユミコが刺身の皿を床に置く。僕は椅子から下りて、ズボンをトランクスごと脱ぎ捨てると刺身に向かい、勢いよく尿を解放させた。

 あまりの気持ちよさに身震いしていると、ユミコがヒステリックな声を上げる。

「ちょっとあなた! 飛び散らさないでよ、床が汚れるわ」

 と、仕方ないことで怒ったユミコが平手で容赦なく僕の尻を打つ。謝りながら尿を出し切ってしまうと、黄色い水に浮かぶ刺身を僕は犬食いで貪りはじめた。

 強烈なアンモニア臭のする鯛やまぐろの赤身、イカ刺しなどを吐き気に堪えながらほとんど噛まずに飲み込んでいく。生温い感触と尿の苦味。胃袋がひっくり返りそうだった。それでいて、ペニスは勃起している。思わず片手で手淫をした。

「あなたったら、そんなにお腹がすいていたの?」

 後頭部を撫でられる感触がしたかと思うと、顔面が皿に押しつけられた。鼻が尿に浸される。もがいていると手が離されて、悪臭にむせながら顔を上げた。

「あなた……可愛いわ」

 ユミコが僕の後ろに回って膝をつく。ペニスバンドの硬さと、腰を掴む手を感じる。

 ユミコに犯されつつ、尿でマリネと化した刺身を平らげながら僕は回想した。


 付き合っていた頃も、新婚ほやほやの頃も、僕はセックスの時、勃起はするけれど射精することが出来なかった。

 そのことについてユミコは何も言わない。傷ついているんじゃないかと思って、申し訳なかった。僕は性癖に秘密を抱えていた。

 ある日、仕事から帰ると家の中が真っ暗だった。不思議に思いつつリビングに入って電気を点けると、ユミコが俯いて椅子に座っている。テーブルの上には僕がこっそり楽しんでいた秘蔵のDVDがあった。

「今日、掃除していたら見つけたの。中身も観たわ」

 ユミコの声が暗く響く。DVDの内容は男が女子高生三人にリンチされている、というものだった。ルーズソックスを穿いた足が男の全身を蹴り飛ばすのだ。

 終わった……と思って、僕は青ざめた。しかし次の瞬間、ユミコは信じられない言葉を発した。

「酷いわ、あなた! もっと早くに言ってくれれば、あたし頑張ったのに!」

 −−以来、ユミコは僕の仕込みで立派な悪妻となった。


 達する直前、僕はユミコに言われて尿しか残っていない皿を下へとずらし、そこへ射精を済ます。ユミコはペニスバンドを引き抜くと、尿と精液が揺れている皿にご飯をよそってくれた。

「あなた、残さず食べてね」

 夕飯が僕の前に置かれる。もちろん刺身と同じようにほとんど噛まず、飲み込んでいく。吐き気だけではなく、涙まで滲んできた。

 食べ終われば、絶対吐かないように堪える。今吐いたらきっと、吐瀉物を食べさせられることになってしまうからだ。

「あなた、美味しかった?」
「ああ……ありがとう」
「お風呂も沸いてるから、入ってきて」

 ユミコが皿を下げた。ズボンとトランクスを持って、いそいそと洗面所へ向かう。着ていたものをカゴにほうり込み、浴室に入って十分に身を清める。胃袋は変わらず気持ち悪かったけれど、ユミコがせっかく用意してくれた夕飯だからこなれるまで湯船で待った。

 入浴を終えて、タオルで体を拭いている最中に「あなたー」と僕を呼ぶユミコの声。それに裸のまま従ってみたら、ユミコは寝室のダブルベッドにセーラー服姿で腰かけていた。脚は、紺のハイソックスを穿いている。

「夫婦の営みの時間よ」

 ユミコは無邪気に笑うと立ち上がって、僕の唇に噛みついてきた。血の味がする。

 ベッドに押し倒された。まだ子供を作る気のないユミコは僕のペニスにコンドームを纏わせ、そのまま騎乗位で僕を犯す。僕は決して動いてはいけない。

「あなた、好きよ、大好きよ」

 好き、という言葉をうわごとのように繰り返し、腰を振るユミコ。


 本当、可愛い妻。可愛い女。可愛い性具。愛情で縛ってしまえば容易いものだったのだ。子供をまだ作る気がないのは僕の意思。だって子供なんか出来たら、こんな風に楽しむことが難しくなってしまう。そうなったらユミコへの愛が冷めるかもしれない。

「愛してるよ、ユミコ」

 僕たちは世界一幸せな夫婦だ。ユミコのヴァギナが僕のペニスを、ゴムの膜越しに強く締めつけた。



 END.



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